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ルキドも神に快癒を祈るまでした

ルキドも神に快癒を祈るまでした。しかし、兄は為す術もなく日に日に弱って行った。病に倒れてから二十三日目、ルキドの兄はひっそりと息を引き取った。『母さんありがとう。ルキド、俺の分も・・・・・・』が最後の言葉だった。呆気ないものであった。神は何処で油を売っていたものか。ルキドの母は看病疲れも手伝い、憔悴疲弊してやつれ方も一方為らず、その死に落胆消沈した。彼女は横たわる死骸の髪を撫でながら、その死に顔を無言で見詰めていた。側にいたルキドも大好きであった兄の頬に手を伸ばした。ルキドにとって信じられない事が起こったのはその瞬間であった。茫然自失の様子であった母の手がルキドの手を邪険に撥ねのけたのだ。「触らないでっ。・・・・・・お前が、お前が代わりに死ねば良かったのよ。」見た事も無い母の表情であった。狂気錯乱して何かの発作か、小さく体を震わせていた。なまじ美しい顔立ちの為か、その表情が酷く恐ろしいものに見えたほどである。 余りの母の豹変振りに、そしてその理不尽で情け容赦の無い言葉にルキドは凍り付いたように何も言えず、身動きすら出来なかった。「出て行って。この部屋から出て行きなさい。」更に容赦の無い口調で母は追い撃ちを掛けた。この日を境にルキドは家を飛び出した。後は野良犬よろしく世を渡り、いつの間にやら野盗の一員になっていたのである。「・・・・・・これが、ルキドの生い立ちらしい。」 playgroup香港 結構長かったヒルネーの話を、ハンベエは腕組みのまま黙って聞いていた。「その話は直接ルキドと言う奴から聞いたのか?」「いいや、誰から聞いたかは忘れたが本人からじゃなかったはずだ。」「ふむ。」ハンベエは腕組みを解いて額に手をやった。「奴が女の顔の皮を剥いだのは一度や二度じゃない。それもかなり美人の女に限って剥がれてる。奴にはそういう気のふれた癖が有るんだよ。」やり切れないという顔付きでヒルネーは吐き捨てた。(美人の顔の皮をねえ。一皮剥けば皆同じってか。しかし、ルキドって奴の生い立ちの話は本当か?、本当なら、本人が誰かに話した事になる。女の顔の皮を剥ぐ言い訳か? それとも誰かの創作か。が、どうやら、どうでもいいような話のようだ。)ハンベエは纏まらぬ思案をほっぽり出してしまった。ヒルネーから聞いたルキドの生い立ちは、ハンベエにとっては必要な情報では無かったようだ。「そのルキドって奴は斬る事に決めている。そう遠くない日にこの地上から消滅させてやるから安心しろ。」ハンベエは取って付けたような気安い調子でヒルネーに言った。「ありがてえ、これで思い残す事はない。斬首なり磔(はりつけ)なり、好きにしてくれ。」「ん?」「俺だって、アカガネヨロイの一味だったんだ。もう罪を逃れるつもりはない。」「・・・・・・。」成る程、こいつも盗賊の一人だったんだよな、とハンベエは今更思い出した。(確かに野盗の類いならば処罰しなきゃならんのだろうが・・・・・・しかし、面倒臭いな。俺は別に正義の味方ってわけでも無いし、人を処罰するって柄でも無い。)「黙ってどっか行っちまいな。どうしても、罰が受けたいなら、この王宮にいる他の係の奴に当たるんだな。」「俺を見逃してくれるのか?。」「俺の前にはもう顔を出すなよ。」ヒルネーはハンベエを訪れる前に死を覚悟していたらしい。この対応に拍子抜けした様子で、それでも首を捻り捻りハンベエの所から退出して王宮を去って行った。 後に残ったハンベエは何故か憂鬱そうな顔付きで『ヨシミツ』を鞘ぐるみ顔の前に持ち、少しだけ抜きかけの状態でその刃を見詰めていた。「これじゃいつまで経っても、お師匠様の下に『ヘイアンジョウ・マサトラ』を届けられないじゃないか。」 誰に言うとも無く呟いていた。

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